関節リウマチ(RA)の治療は他の医療分野以上に進化しています。では、それに伴って骨粗鬆症による脊椎圧迫骨折は減少しているのでしょうか?実は、はっきりしたデータはなかったのです。
今日の論文は、Guanabens N., et al.,Vertebral fracture are increased in rheumatoid arthritis despite recent therapeutic advances : a case control study.Osteoporosis Int (DOI https://doi.org/10.1007/s00198-021-05824-7ternational)です。
方法
2018年に、19のスペイン国内のリウマチ科から323人の閉経後のRA患者をランダムに募集しました。対照は、年齢をマッチさせた閉経後の人を募集し、評価のために胸椎、腰椎のエックス線側面像を撮影しました。
結果
RA患者の24.5%は1つ以上の脊椎圧迫骨折を認めました。対照では16.06%であり、RA患者では骨折リスクが上昇しています ( p=0.02 )。ロジスティック回帰分析では、年齢 ( OR2.17, 95%CI 1.27-4.00 )、ステロイド使用 ( OR3.38, 95%CI 1.27-4.00 )、転倒 ( OR3.57, 95%CI 1.91-6.87 ) が、RA患者の脊椎圧迫骨折の独立変数でありました。圧迫骨折を伴い群は伴わない群と比較して、疾患活動性が高く ( DAS28 : 3.15 vs 2.78 )、機能が低下 ( HAQ : 0.96 vs 0.63 )していました。
関節リウマチを診る医師も、患者さんもどうしても目の前の関節痛や関節腫脹に目をとられ、生物学的製剤などのリウマチそのものの治療に専念してしまうのですが、リウマチそのものや使用するステロイドなどにより生じてしまう骨粗鬆症に目が届かないことがあります。そして、「リウマチに対して生物学的製剤まで使っているのだから、骨粗鬆症もよくなっているのだろう」思いがちですが、この論文が示すように、「関節リウマチ患者における骨粗鬆症性圧迫骨折は減少していない」のです。
それでなくても、抗リウマチ薬や生物学的製剤は高額で大変だとおもいますが、だからと言って骨折を生じるような骨粗鬆症を見逃す訳にはいきません。
関節リウマチを診察する医師は特に見逃してはいけいないし、患者さんも、特に女性で50歳台を過ぎた方は、主治医の先生に「私の骨粗鬆症はどうなってますか?脊椎のレントゲンや骨量を調べてほしいのです」と聞いてみて下さい。